60年代以降、メンズファッションの潮流に必ず現れるミリタリーというワード。
男性の琴線に触れるガジェットのようなデザインとディテールがミリタリーウェアの特徴です。(特に空軍)
90年代ファッションが現代ファッションのデザインベースになっているのは承知の事実ですが90年代当時、メンズファッションにて取り沙汰されていたミリタリーと言えばイタリアのミリタリーパンツでした。
例えば1980年代のコンバットパンツやパラシュートパンツ、フランスミリタリーのF2パンツなど。
出所は勿論、マルタンマルジェラのアーティザナル。
90年代後半から2000年前半のメンズファッションシーンで多大な影響力を持っていたマルジェラ⓪⑩(メンズアーティザナルライン)
中でも特徴的だったのがミリタリーウェアをベースにした再構築でした。
当時リメイクのようなことは他のブランドでもチラホラと見かけることもありましたが、マルジェラ(当時はマルタンと呼んでいました)の再構築が個人的にツボだった理由は多くの付け足しをしないデザインだったことです。
要は「引き算の美学」ですね。
元のディテールを抜いたり、表面を入れ替えたりと元々あったものを如何に違った側面を生み出せるのかという部分にフォーカスさせた再構築でした。
このセラドアのパンツを見た時に、ふと、その時と似た感覚を感じるものがありました。
このパンツはイタリア空軍のパラシュート部隊が着用していたパラトルーパーパンツと呼ばれるものがデザインのベースになっています。ポケット位置が違和感を感じさせますが、これは座った状態や屈んだ状態の時に丁度良い位置にポケットが来るように設計されている為です。
実は、このモデルインラインのデザインでは八分丈でデザインされていました。
恐らくトップスはカットソーとの組み合わせにフォーカスしていたのだと思いますが、VELISTAが得意とするシャツとのコーディネートも組めそうだなと思い、8センチほどレングスを伸ばし全体のバランスを整えフルレングス仕様に別注を掛けてデザインしました。
お陰でタックインしたときにもトップスとのバランスが取りやすくなり、カジュアルな雰囲気だけでなく、ドレス、モードのコーディネートにも使えるボトムスに生まれ変わることが出来ました。
そして幾つか選択肢のあった生地の中で、清涼感があり、運動量の多くなる夏場にでも速乾性と皺が乗りにくい上品な雰囲気を持った某ラグジュアリーブランドでも多様されている高級ポリエステル素材の生地を使用しています。こちらの生地が本当に優秀で、購入してからほぼ毎日着用していますが、膝裏にシワが全く入らず、スパンデックス混紡の生地の為、程よくストレッチ性もあるので生地が突っ張る事もなく、速乾性が非常高く、とても履き心地が良いのです。
全体的に過度なディテールは排除されながらも元になったミリタリーの重厚感を上手く中和させる艶のある生地とラグジュアリーなファスナーのアクセントがシンプルな夏のコーディネート(特にトップスのミニマムさ)に丁度良いポイントを与えています。
これまでトップスにポイントを持っていきがちだったメンズのコーディネートですがポイントをボトムスで作る新しいコーディネートが今年のサマースタイルとしてお勧めします。
足元にはレザーサンダルが気分ですね。