最初に宣言しておくと、これらは全て主観、想像の域、全く的外れな見解かも知れないけど、洋服をこんな視点で見る楽しみ方もあるということでお許し頂きたい
基本的にテーラードジャケットについて言及することは避けている
理由は少なからず本粋(BESPOKE)を知っているだけにブランドの作るテーラードJKTについて伝えるときに私如きの知識では、どうしても縫製、仕様云々を持ち出して語るしかない
それは同じテーブルに乗せて比較するというナンセンスな議論に陥るのが分かっているから、しない(ちょっとしたリスクヘッジ)
オーダーメイドと量産を比較するほどナンセンスなことはない、どっちが上とか下とか、そんなものではない
14年(いや13年か)両方の真ん中に立って見てきた自分だから、良くわかる
この良くわかるというのも俯瞰のポジションでの話(ディレクターやバイヤー、ファッションアドバイザーの立ち位置)
パターンも引けないし、デザイン画も書けない、勿論、縫製もジーパンの裾上げを4分で出来るぐらいの腕しかない
(これは昔バイトしていたロードサイドのジーパン屋で初日から業務用ミシンで無理やり縫わされて身についた、1日20本ぐらい、、、ブランク26年ぐらいだけど、一時間ミシンを走らせれば、多分、キワキワのコバを攻めても片手で縫えると思う)
クリエイティブな脳は持っていないけど、売り場と工場(こうば)を行ったり来たり、それも丸縫い職人と量産の縫い子さんを同じ日に相手して(ほぼ怒られて)次の瞬間、売り場でヴィンテージを売るとかミクスチャーにも程がある日常に身を置けたから身に付いたある種の真贋(心眼)能力
さて本題
そんな私が伝えたいと思ったジャケットがある
これ。
前出したように私の中ではテーラードとして見ていない(勿論、ディスではない)
接客の時に便宜上、そのワードを用いることは許して頂きたい
このジャケット、普通じゃない(故に面白い)
何が面白いかというとディレクションが面白い
ぱっと見のディテールはテーラードJKTの持ち物を纏っているけど、明らかにバランスが違うというか出発地点が違う
30年代ぐらいまでのフレンチワークの極端な肩傾斜と若干の前振り袖、肩線の倒し方もテーラードというより明らかにワークの意匠に近い、前肩と言ってもトルソーに着せつけた画像を見ればブリブリでもない(抱きジワはない)
等半袖は、そもそもワークジャケットに用いられる仕様
ここまで来ればサックコートに該当する
でも背面は見るからにワークジャケット、ウエストの絞り位置も特段高くないと言うよりもボックスに近い(もしかしてアメトラ??)
あ、袖口仕様はマルタンへのオマージュかな?
とは言え襟が抜けなさそうな美しい上り襟はナポリ的だし、バルカポケットと手閂も同様、今の空気を盛り込んだハイゴージも狙っているように思うし、何より最もクレイジーに感じたのが生地のチョイスと、手の入れ方
シャークスキンと言えば英国では定番の生地、本来は以下にもイギリスらしい端正や艶とはっきりと見せるジグザグの織りが特徴。
縦糸はシルクなら、本来、艶で表現しそうなもの。そのシルクの持つもう一つの側面、起毛感を選択している、故に表面にモヤがかかったような曖昧なニュアンスが現れてくる。これならイタリア直系のバーズアイで表現しそうなもの。
お気づきだろうか、すでに3カ国(いや背面のアメトラを入れると4カ国)の要素が入っている、しかもかなりの変化球で
でも袖を通したときに、その意図が理解出来たから、セレクトした(そう、振り幅が相当広い、扱いはカバーオールで正解)
幾つものエレメントを素直に入れるのか、はたまた捻るのか、その割合と濃度、足し引きの加減
やっぱり面白い、(そもそもだがモデル名に既にヒントが隠されていた→未構築ジャケットだって)
一先ず、うちのスタイリングは、これを提案してみた、非常に直球。パンツはワイドに敢えて振らない、欲を言えば足元はcary grantが望ましい
(捻りは隠すのが流儀なので)
お題maateeに対して20代、30代、40代の酸いも甘いも内包した、うちの楽しみ方はこんな感じです
(古着のオーバーオールで崩しまくってもOKよ)